移住体験記
〜第10話 中島 博史さん〜
移住体験記 第10話は、富良野でペンションを開業した中島 博史さんです。


センターハウス 私たちが北海道へ移住して、今年で10年になります。

この10年は、私たちの生活の中でさまざまな経験をしました。
富良野でペンションを開業したい夢を胸に、だれも知人のいない北海道、札幌へワゴン車に積みきれる、わずかな荷物とともに、妻と2人で引っ越してきました。

札幌を第一に選択したのは、札幌は住む場所、仕事、道内の情報や富良野方面へ日帰りでいける距離、その他、自分たちの必要な情報を得やすいとの考えで引っ越して来ました。

移住した初めの2年間は生活をしていくために時間が費やされ、自分の夢の部分と現実の部分のギャップ、方向性など、基盤作りに日々おわれていたように思われます。
その後、北海道の生活にも慣れ、少しずつ生活面に余裕ができ、友人も増え、より一層楽しんで生活することができ、春夏秋冬を楽しみました。

1番の目的である富良野でペンションを開業する計画は、土地を見つける作業が苦労しました。
自力で土地を見つけ、交渉すると考えていましたので、自分の足で美瑛から富良野にかけて探し回りました。
電気、水道のライフラインや十勝岳連邦や大雪山が見える場所など景色にもこだわり、子供もいましたので小学校の位置など自分の希望にあう土地を探し続けました。

当たり前のことですが、どこもだれかわからない人にいきなり訪ねて「土地が欲しい」「いいよ。売ってあげる」という人がいるはずがない。絶対といっていいほど見つける確率は低いですね。ある場所に話がまとまりかけ「決まった!」と思ったのもつかの間あらたな問題があり、あきらめなければならない土地があったりしました。

現在、私たちが住んでいる中富良野町の土地に出会うのに約4年くらいの時間がかかりました。この土地から見る風景は自身をもって「すばらしい」と自慢できます。この土地から、はじめて出会い、そこから見た風景、地主さんからOKをいただいた日は一生忘れることのできない思い出です。

やっと土地にめぐり会い、次はいよいよ建物をたてる作業です。
私はセンターハウス建築のとき、9月〜12月にかけ小屋の中で生活をして、昼間は大工さんと共に自分でできる作業をおこないました。
家が完成するまでは、水や電気は開通していない為、発電機での生活でした。
夜は発電機を停止すると、あたりは静かな世界がひろがり、晴れていれば、きれいな星空をながめ、風の音、雨の音、雪が降り積もる音など、忘れかけていた、自然界の音をあらためて感じることができました。

その年の12月末にセンターハウスも完成し、2001年12月末に、中富良野町の町民になりました。


センターハウスに続いて、2002年1月〜5月までコテージ3棟を製作し、3月にセンターハウスオープン、ゴールデンウィークにコテージ風分室3棟をオープンさせ、とうとう、ペンションオーナーとしてのスタートを、きることができました。

富田ファーム 彩の丘 富良野といえばラベンダーや"北の国から"のドラマで全国に知れ渡りました。
"さわやかな、北海道の夏"。この地区は夏が年間を通して一番観光客が訪れます。
6月下旬よりラベンダーが咲き始め、7月20日前後にピークをむかえ、その他、花畑も、ポピーをはじめとする、夏の花々がきれいに咲き、ポスターやガイドブックに使用されている風景がひろがっています。

花が見頃をむかえると同時に宿泊客もピークをむかえ、とくに7月は連日満室で、私たちも、早朝から、夜おそくまで、食事の用意や、ベットメイク、農家から食材の仕入れと、1日、1日あっという間にすぎていき、ほとんど家の中、あるいは、その周辺から出ることができない日々が続きます。もしかしたら、お客様の方が現在の周辺の花畑の様子、風景を、私たちより、知っているかもしれません(笑い)。

私たちの宿は、人と人との、絆を、大切にしています。夕食の後、KIZUNAの周辺の四季を、スライドを使って案内をしたり、観光案内や、日常のちょっとしたことの話題なんかで、楽しいひとときを過ごしていただいています。この時間は私たちにとって、いろいろ勉強になり、今後への、はげみになります。

私たちは、お客様との交流を、とても、大切にしています。
多くのお客様は、北海道が広く見どころが多いため、一泊で次の目的地へ移動される方が多いです。私としては、美瑛から富良野にかけて、一日では見ることのできない、多くの、是非見ていただきたい場所があります。

例えば、農作物がどのように成長し、出荷されているか、ガイドブックには載っていない風景、住んでいるからこそ発見できる、季節の変化や生活の様子を、お客様に発信できたらと考えています。

北海道へ移住して10年、中富良野町民4年がすぎ、まだまだ新しい発見の日々は続きます。


2006年5月 中島 博史さん
中富良野町在住
ペンション:四季のやど―KI・ZU・NA−経営
北海道空知郡中富良野町西2線北19号
Tel&Fax 0167-44-4770
http://shikinoyado-kizuna.com

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