□■□■  千歳空港民営化論□■□■
      〜千歳空港を道民に返せ〜

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石黒直文(当会理事長)

 扇大臣のころ盛んに論議されていた成田、関空、中部の国際拠点空港
の民営化論は一体どうなったのだ。道路公団の民営化も、総理大臣と猪
瀬とか言う男が張り切っているだけで、さっぱり先がみえないが、空港
の方はもっとひどい濃霧の中で着陸不能状況。国土交通省のホームペー
ジを開いても、成田の平成16年特殊会社化は書いてあるが、関空と中部
はやるのかやらないのかはっきりしない。
 大体、政府の言う民営化は話の筋がおかしい。道路にしても、空港に
しても箸にも棒にもかからない赤字事業を民営化しようとするから話が
おかしくなる。そうじゃなくて黒字の事業を民営化すべきなのだ。儲
かっている事業を中央の政府がやっていることはない。早く地方か民間
へ渡して、安い値段でいいサービスを提供し、儲けをさらに増やして税
金をしっかりおさめてもらえばいいのだ。うまい話を中央の政府が抱え
ていれば、ろくなことはない。蜜に蟻がたかるように天下り役人が群れ
て、むさぼり食うだけだ。

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スグレモノ千歳空港
千歳空港(自衛隊空港を含む)は、日本の他の拠点空港に比べて五つの
点でずば抜けている。
1.
建設コストが安い
2.
横風が吹かない(横風用の予備滑走路不要)
3.
欧米に近い
4.
自衛隊との共用空港である
5.
新幹線という競争相手がない。
 まず、千歳がどのくらい安くできているかというと、現在までに固定
設備に投入した金額は、成田が9900億円、関空が19000億円、中部が
7600
億円。そしてわが千歳空港は、滑走路4本で、過去35年間に開発予
算を通じて投入した金額はたった954億円、ターミナルビル、鉄道引き
込みを含めても2000億円に過ぎない。つまり、滑走路1本あたり500
円、成田の120,関空の138,中部の115なのだ。したがって有利
子負債も、成田、関空、中部がそれぞれ5800億円、12000億円、4600
億円抱えているのに対して、千歳はターミナル分として270億円に過ぎ
ない。
 その結果、収支バランスも千歳が抜群にいい。なるほど成田は200
円を越える黒字を出しているが、それは国際的に見てベラボーな空港使
用料を取っているからであって、海外並みに使用料を引き下げればたち
まち赤字に転落する。関空、中部は、論議の対象にはならないほどの大
幅赤字。これに対して、千歳は、推計で年間償却前300億円近い黒字と
なっている(空港使用料は国内使用料、成田の12)。つまり、千歳を
仮に1000億円で買い取ったとしても、4年もあればらくらく返済できる
計算だ。
 横風がないというのも空港としては大きなメリットだ。無駄な滑走路
を持たなくていいというほかに、滑走路の増設を並列だけでなく直列に
設計することが出来る。直列型は、ターミナルと滑走路間の陸上誘導時
間(タキシングタイム)大幅に短縮し、航空会社の機材繰りの効率を高
めることになる。 

航空会社は大助かり
欧米の中心と結ぶ直線距離が短いということは航空会社の燃料効率を飛
躍的に高める。たとえばボーイング747400の離陸時最大重量は合計
395
トンで、燃料152トン、有償貨客重量65トン,機体自重177トン。つ
まり、152トンの燃料を使って65トンの貨客を運んでいるわけだ。千歳
は、成田、関空に比べて米東海岸で811%、ロンドンで912%短い。
距離が短くなれば必要積載燃料が減り、逆に金の取れる貨客をその分だ
け余計に積めることになる。たとえばニューヨーク便で千歳着の方が成
田着より8%短いから152トンの8%=12.2トン燃料が減る。その分、貨
客は65トンから77.2トンへ増える。つまりをペイロード(燃料効率)が
18
%向上することになる。
自衛隊との共有空港ということは、安全の観点からも、効率の点からも
決して悪いことではない。自衛隊と一緒ということで毛嫌いする向きも
あるだろうが、今後の安全保障を考えると地元の警察と消防に頼るだけ
では間に合わない時代になりつつある。また、効率の点からも自衛隊と
費用分担することによってコストを削減することが出来る。
千歳、羽田間の航空路が世界一の搭乗客を持つドル箱路線だということ
は良く知られているところだろう。その最大の理由は、ある意味では不
幸だが、新幹線がないからだ。つまり本州、九州と違って航空会社に強
力な競争相手がいない。だから、エアドウ出現以前のように航空3社が
共謀すれば悠々と高価格を維持することが出来る市場なのだ。

■ 
千歳空港を道民に返せ
この千歳空港は、大正の末年、当時の千歳村民が勤労奉仕で作った飛行
場だ。昭和に入って海軍航空隊の基地となったときも、道民の血と汗で
築かれてきた。戦後、進駐軍の接収、ついで自衛隊基地、民間空港の併
設、ターミナルビルの建設と続く。戦後、開発予算を通じて滑走路や航
空援助施設に投入した国費総額は、先に述べたとおり自衛隊分を含めて
954
億円。ターミナルビル等の施設は民間会社である北海道空港株式会
社が建設、所有している。
ご承知のとおり、いまや世界の国で飛行場を中央政府が持っているとこ
ろは、社会主義国やよほどの低開発国以外にない。米国はほとんど地方
自治体、たとえば世界一のシカゴ・オヘア空港はシカゴ市、ニューヨー
JFKはニューヨーク市の所有。ヨーロッパやアジアは、英国、ドイ
ツ、オランダ、中国、香港、韓国、シンガポール等軒並みに民営化した
か数年以内に民営化される計画だ。
現在、国が持っている空港は、防衛庁、地方公共団体との共用を含めて
32
空港ある。このすべてを民間もしくは地方へ引き渡すべきだ。平成13
年度の空港整備特別会計から資本勘定を除いて収支がどうなっているか
を推計すると、償却前約1500億円の黒字となっている。これに一般会計
からの受け入れ1173億円、航空機燃料税872億円を加えた金額を国土交
通省が空港整備にばらまいているのだ。よく考えてみたら何も有難がる
必要はない。これは全部高い空港使用料や燃料税を通じて利用者である
われわれが払った金なのだ。とくに北海道民は、新幹線がないために負
担が余計になっている。
それなら千歳空港は自衛隊使用分も含めてわれわれ道民に返してもらお
う。この間に払った国費945億円は返してもいい。自衛隊は出て行けな
んていわない。先に見たようにこれからの国際拠点空港にとって国際的
な安全保障にかかわる備えは必要なのだ。その代わり、使用料はきっち
りいただくことにして仲良く使っていきたい。

道民の知恵と努力で
千歳空港がわれわれの手に入ったら、北海道の発展にとって面白いこと
がいくらでも考えられる。まず国際線の空港使用料を思いきって引き下
げる。今の成田、関空の料金では、国際ハブ空港として中国、韓国に負
ける。安くすれば前述のメリットとあいまって千歳空港の魅力はいっそ
う高まり、国際ハブ空港として必ず勝てる。国際化が進めば雇用効果が
飛躍的に高まる。
小泉内閣は、民営化をいい、規制緩和に特区制度を導入した。しかし率
直にいって口ほどに進んでいない。北海道で民営化や規制緩和をやるな
ら、まず、千歳空港を道民の手に戻すことだ。わけのわからない道州制
なんかより北海道の活性化にはるかに効果がある。道民も、思い切って
知恵と努力を発揮する余地があろうというものだ。

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編集後記
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                  2003年11月17日

先日、アテネ五輪予選の日本チームの応援に札幌ドームに出かけた。
相手が韓国ということもあり、4万人超入る球場はほぼ満席だった。
縦じまの虎印の応援グッズを持参したが、周りでは燕チームや兎や
竜の応援メガホンが同時にゆれ、ペナントレース最中では考えられ
ない状況での応援と相成った。
その中で一番声援が大きかったのが、日ハムの小笠原選手。その日
は残念ながらバットから快音は聞こえなかったが、北海道民が、
日ハムにおおいに期待していることがわかった。
トレード問題で、特に今年のシーズンオフは騒がしいが、小笠原や
坪井など、昨年活躍した選手と、加えて優勝を目指せる選手が札幌で
活躍し、来期は毎日が楽しく騒がしくなるに違いない。

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