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私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.24
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■「激論! 年金問題と少子化問題」
石黒直文(当会理事長)
VS 紺矢寛朗(北海道厚生年金会館館長)
■ 編集後記
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2004年12月3日
石黒提案に反論する
紺矢 寛朗
(北海道厚生年金会館館長・北海道医療大学非常勤講師 )
石黒さんの問題提起について疑問点を列挙します。
第一に、年金問題は少子化問題なのか。
第二に、これまでのエンゼルプランは少子化対策だったのか。
第三に、これまでの人口予測がなぜ外れてきたのか。
第四に、先進国で出生率を維持できている国とそうでない国があるのは
なぜか。
第五に、少子化対策として有効な施策は何か、サプライズ効果が期待で
きるのか。
第六に、年金積立金の活用とは何か。
まず、この問題を考えるに当たって年金を始め、社会保険をめぐる不
祥事をまことに遺憾に存じます。社会保険が、今日、空気や水同様、国
民生活にとって、とくに老後の保障において、なくてはならないものに
なっており、社会保険の信頼を確保することはその制度を維持していく
上の前提となっています。昨今の不祥事は、その国民の信頼を損なうも
のであり許されないことであります。
さて、第一の「年金問題は少子化問題化か」です。現在の年金問題
は、給付と負担のアンバランスがポイントです。現在すでに期待されて
いる将来の給付に対して、将来の負担が少ない。これが問題の中心で
す。給付と負担がアンバランスだというのは、将来における国民全体に
対する年金給付の合計と国民全体が負担する保険料と税金の合計とのバ
ランスがとれていないということです。年金と負担はバランスがとれて
なければならない。これを明確にしておくために、税とは別に保険料を
集めるとともに、給付設計を示していると考えます。
なぜアンバランスが生じたか。現在の負担に対して過大な負担を期待
しているからです。それを是正するため、保険料を毎年度引き上げると
ともに、国庫負担を増やし、給付水準に見合う負担を確保することとし
ています。保険料の引き上げを前提として給付水準を設計してきたとい
うことです。そして、その算定の基礎として人口予測を使用してきまし
た。
前回、5年前の年金改正で、すでに厚生年金保険料率は、25年間で50
%引き上げられるものとされており、今回の人口推計で出生率が1.1ま
で低下すれば、さらに25%のアップが試算されています。
したがって現在、最大の年金問題は、給付水準と保険料率バランスし
てないことにあります。その計算に使用した人口予測が動いたこととは
区別して考えることが重要だと思います。年金問題イコール少子化問題
ではないと思いますがいかがですか。
第二に,これまでのエンゼルプランに対する批判にお答えします。こ
れまでのエンゼルプランは少子化対策ではなかった。次の新らしいエン
ゼルプランが少子化の視点の入った最初であって、少子化対策はこれか
らだと思います。
昨年の少子化対策法、そして今年の次世代育成支援法の制定を受け
て、この年末、新新エンゼルプランが策定されます。この新新プラン
が、はじめて少子化対策を正面に据えたもので、これまでの施策に対す
る批判は当を得ないと思います。
第三に、これまでの人口予測がなぜ外れてきたのか。これをはっきり
させなければ少子化対策の有効性が見えてきません。
まず、団塊の世代の出生行動は基本的にそれまでの世代と同様であっ
たということです。その後の世代の晩婚化が出生率を低下させてきた。
加えて夫婦一組の子どもの数の減少が出生率を減少させてきたのです。
5年に一度の国勢調査を10年、20年経て、この事実がはっきりしたとい
うことでしょう。
第四に、スウエーデンやフランスなど、出生率が維持されている国と
そうでない国があるのはなぜかという問題です。
それぞれの国についてさまざまな分析が行われています。スウエーデ
ンでは、女性の労働力化が進み、その条件維持のため環境が整っていま
す。そして1990年代、育児休業時の所得補償を第1子と第二子を同じと
したことが大きいといわれています。
フランスでは、子育てに対する社会環境の整備とともに1986年の戦後
ドゴール体制に対する5月革命による女性の社会参加の徹底が大きいと
いわれています。この両国以外にも出生率が維持されている先進国があ
りますが、それぞれの国の実情を見る必要があります。
わが国としてはこれらの国の動向を踏まえ、ただちになすべき少子化対
策実施すべきでしょう。
第五に,少子化対策の有効性と効果について、まず保育をはじめ、さ
まざまな支援を拡充すべきです。その上で、少子化対策は、きわめて国
民の文化ともいうべき根幹に関わる事柄でありますので、社会全体で取
り組んでいく冷静な対応が必要でないかと考えます。
第六に、少子化対策の財源については、年金積立金の活用でなく、一
般財源の投入を強く主張したいのです。
年金積立金は、年金給付の貴重な財源であり、年金に対する信頼を確
保していくためにも本来の年金給付に当てられるべきものです。した
がって少子化対策の財源は、その必要性について国民合意を得て、年金
積立金の取り崩しではなく、一般財源を投入すべきものと考えます。
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■ 編集後記
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2004年 2004年12月3日
12月1日に新・函館市が誕生し、その瞬間を函館で過ごすことが
できた。港はイルミネーションで美しかった。函館駅では記念の
クッキーが配られ、市電は200円均一だった。めでたい。
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