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私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.3
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■ 北海道の弁護士会に期待するもの エア・ドウ一株主
■ 編集後記
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2003年2月17日
□■□■□■□■北海道の弁護士会に期待するもの□■□■□■□■
エア・ドウ 一株主
◆はじめに
北海道に司法のインフラが必要という、前号の馬杉弁護士の意見に、
全く賛成です。
これまで北海道は、道路、港湾といった鉄とセメントで固められたイ
ンフラの整備に熱心でした。しかし、これから必要になってくるのは、
そういったいわばハードのインフラではなくて、知的なインフラであり、
その最も重要な部分が司法システムだという指摘に感銘を深くしました。
◆許しがたい不公正競争
しかし、それならエアドウが苦闘を続けているとき、なぜ、北海道の
弁護士会が、力をあわせて不正を糾弾し、北海道の数少ないベンチャー
企業に救いの手を差し伸べなかったのでしょうか。
私は、故浜田輝男さんの高い志と熱い思いに共鳴し、エアドウの増資
に喜んで応じました。私は、エアドウの株が紙切れになったことを何も
後悔していません。むしろあのとき浜田さんの情熱に答えなかったら、
北海道人として恥ずかしい思いがいつまでも残っただろうと思います。
いま、私が許しがたいと考えているのは次の二つです。その第一は、
既成3社の明確な不公正競争とそれを見逃した公正取引委員会および
運輸省の怠慢であります。
ご承知のとおり、エアドウが価格を引き下げて運航を開始した際、既
成の3社が共謀してエアドウの3便を囲む形で対抗の安売りを仕掛けま
した。これほど明確な強者による「私的独占による競争制限」「不当な
取引制限」「不公正な取引」行為が公然と行われたことは、独禁法制定
以来ありません。また、これほど歴然とした証拠が残っている事犯も珍
しいでしょう。
それにもかかわらず、独禁法の番人である公正取引委員会は、排除措
置はもとより、勧告すら行いませんでした。また、許認可官庁である運
輸省(現国土交通省)も漫然と手をつかねているだけでした。「日本の
中央官庁は、結局、天下り先の中央の巨大資本と癒着関係にあるのであ
って、零細企業や地方のことなどどうでもいいのさ」という世の中のジ
ョーシキをみごとに裏打ちしたといえましょう。
◆結局儲けたのは誰か
第二は、民事再生手続きによって、北海道の人々や公共団体の投融資
した全ての権利がゼロになったことです。なるほど、道民4000名か
ら集めた40億円の資本金、北海道庁や札幌からの借入金等43億円は、
全部食いつぶした結果資産がゼロになったことは事実でしょう。
しかし、エアドウが持っている6便の羽田乗り入れの権利、さらに営
業、発券、運航にかかわるノウハウまでゼロになったわけではありませ
ん。これらの権利の全てが、旧株主から剥ぎ取られ、全日空をはじめと
する新株主の手に無償で渡されることになったのです。真偽のほどはわ
かりませんが、昔、羽田の乗入れ権は、一便当り20億円と聞いたこと
があります。
額はともかくとして一切の債務負担ゼロと身軽になった新エアドウを
手に入れたメリットは決して小さなものではありません。それと引き換
えに旧株主は全ての権利を失いました。減資はいたし方がないとしても、
仮に1%でも権利が残っていればまた楽しみもあったのですが、全くの
紙切れで会社から追い出されたのです。多くの北海道民はリスクを承知
の上でした。しかし、苦労して井戸を掘った者が渇いているのに、後か
ら来た者だけに水が与えられている現実に、無念の思いを禁じえないの
です。
◆北海道弁護士会に期待するもの
私は、弁護士という職業に心からの尊敬の念をもっています。難しい
国家試験を通って、社会正義を実現するため、強きをくじき、弱きを助
ける仕事をされていると信じています。だからもし、エアドウに関して、
北海道の弁護士会が、決然として立ち上がり、貧しい北海道の井戸を掘
った人たちのために行政の怠慢を追及し、巨大な既成3社に戦いを宣告
したとしたら、道民は拍手喝采を送ったに違いないのです。
もちろん、エアドウが破綻したのは、それだけの理由ではないかもし
れません。しかし、これと同じ不当、不公正な競争が米国で行われたら、
既成3社の経営者は刑事罰に問われ、破綻した企業の株主からは損害賠
償請求が突きつけられたでしょう。また、公正取引委員会や運輸省は、
行政訴訟の対象となったでしょう。
いまからでも遅くありません。北海道の弁護士会が、馬杉弁護士が指
摘するように司法インフラの確立なしに北海道の発展はありえないと
お考えになっているならば、ぜひ立ち上がっていただきたいと、痛切に
期待し、希望しています。
以上
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■ 編集後記
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道内は今、知事選の候補者選びがかまびすしいが、その中で11日、
「エア・ドウ、正社員募集」の報がひっそりと流れた。
新聞では、近所にあった求人広告とほぼ同じ大きさの紙面。もはや、
エア・ドウは過去の問題か・・・と思いきや、今回の寄稿をいただいた。
前回ご寄稿いただいた、馬杉弁護士への強力なエールである。
名前を出すことは固辞されたが、「一株主氏」のご意見に、この問題
は、決して終わってはいない、風化させてはならないのだ、と再認識さ
せられた。
株式投資は、言うまでもなく、ハイリスク・ハイリターンの一面を持
つ。投資した会社に万一のことがあれば、株券は紙屑同様となる。しか
し、エア・ドウ株購入に関しては、単なる投資ではない。北海道から、
文字通り「道民の翼」として飛翔する企業の未来への夢と期待を込め、
その実現に自らも参加したい。そんな思いで、エア・ドウの株主となら
れたのではないだろうか。
夢破れ、抗議の声を上げる間もなく、火事場泥棒のように、多くを持
ち去られてしまった。しかし、それを「司法のインフラ整備」の機会と
して捉え、提案してくださった「一株主氏」に、改めて感謝の意を、そ
して、札幌弁護士会の皆様にも、改めて期待の意を表したい。
馬杉氏は、「財界さっぽろ」最新号でも、この件についての発言を続け
ている。粘り強い活動を期待したい。
北海道人の気質としてよく挙がるのが「大らかさ」。しかし、不況の中、
特に経済面では、それが裏目に出ることも多い。このよさを活かし、かつ、
したたかに生きていけるよう、道民自身も生まれ変わるきっかけとはできな
いものだろうか。エア・ドウの件は・・・。
(玲)
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