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私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.31
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 「北海道の立て直しに道民の信を問う」
 
〜ファンダメンタル、ラジカル、ドラマチックな改革をしめせ〜
              石黒直文(当会理事長)

  編集後記

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               2005年11月21日

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北海道の立て直しに道民の信を問う 
 
〜ファンダメンタル、ラジカル、ドラマチックな改革をしめせ〜
                           石黒直文

 道財政が破綻に瀕している。高橋知事は、公共事業費や各種補助金を
大幅にカットするのに加え、8万人の道職員給与を1割削減するという。
 たしかに財政はぎりぎりのところに追い込まれている。年間2.3兆円
の収入しかない道財政が、2000年以降の赤字累計約9000億円。それをヤ
リクリ算段、貯金の食いつぶし、財政健全債という名の借金、さらに返
済繰り延べ等で、これまで何とか生き延びてきた。
 だが、もう貯金はゼロ。サラ金も貸してくれない。今後も毎年2000
以上の赤字が続く。ふつうの会社なら間違いなく倒産だ。それを避ける
には、人件費を含むリストラしかない。公共事業費の大幅削減や補助金
のカットは関係者にとってきわめて痛い。給与の1割カットは働く者に
とってきわめて辛い。たった1割と思うかも知れない。だが、道職員の
平均年齢は42歳。子どもが高校大学に通い、住宅ローンの返済を抱えて
いる世代だ。ひとり一人の家計は、血が流れる。 

 だが、民間は、ずっと前から、もっと苦労をし、たくさんの血を流し
ている。道職員の給与は、国家公務員や他の都府県職員とほとんど同水
準。これに対して、昨年の北海道の民間給与は毎勤統計によると全国比
11
%低いし、最近3ヶ月では16%減に落ちている。さらに、この10年、
多くの企業が破綻に追い込まれ、そこに働く者が永年の職場を失った。
 職を失わなくとも収入は間違いなく減った。このことを考えると、倒
産、失業の心配がなくて全国並の給与水準が確保されている職場は極め
て恵まれている。労働組合が反対するのはわかる。だが、道職員だけが
ハッピーでは道民が納得しない。その意味からいって、まことに申し訳
ないが道職員の給与1割カットは承知してもらわなくてはなるまい。 
 給与カットはやむを得ないこととして、そもそもの問題を考えてみよ
う。再建が本当に必要なのは財政だけか。再考すべきは、道庁のあり方
そのものではないのか。求められているのは道庁の抜本的な改革だ。北
海道の百年に一度の世直しなのだ。道職員の人件費カットだけで万事O
Kだと、もし知事や道の幹部が考えているのならそれは全く違う。成功
しない。北海道が立ち直らずに道の財政が立ち直ることはない。数年後
に今度は1割カット程度ではどうにもならない本当の窮地に追い込まれ
る。

 しかし、考えようによっては、危機はチャンスだ。危機感を道職員の
みならず道民みんなが共有できれば、新たな北海道発展の好機とするこ
とができる。
 1980年代、米国は大幅な財政赤字に悩み、鉄鋼、自動車、銀行という
基幹産業が日本企業の進出にあって危殆に瀕していた。その時代に米国
の経営学者が書いた構造改革のマニフェストがある。これによると一番
大事なことは何のために改革をやるかという目的意識の確立だ。米国企
業の経営がおかしくなったのは、会社は何のために存在するかという目
的意識が労使共有のものとなってなかったからだ。組織や仕組みをいく
らいじくり回しても、意識の根本が変わらなければ絶対に成功しないと
いう。
 だから、まず、明確に示すべきは目的だ。何のために構造改革をやる
かだ。道庁そのものを道民のためにどう変えていくかだろう。給与1
カットも結構、補助の削減も受け入れよう。しかし、その痛みを乗り越
えた先にどういう明るい未来が開けているのかが北海道全体の共通のも
のになってない限り、改革は成功しない。人が、巨額の金を払って危険
と痛みを伴う大手術に臨むのは、治る希望と執刀する医師への信頼があ
るからだ。希望と信頼のない手術を受ける患者はいない。手術しても病
気は治らない。
 マニフェスト同時によれば、構造改革は、同時にファンダメンタル
で、ラジカルで、ドラマチックでなければならないという。従来の延長
線上に改革はない。変革には痛みが伴う。松下幸之助さんはこういって
いる。「前年比1割伸ばすとか、1割減らすという目標が一番あきません
な。年間1割ぐらい伸ばすのも減らすのもそんなに難しいことやない。
しかし翌年になったらまた元に戻ってまっせ」。伸ばすなら10倍、減ら
すなら思い切って全廃するぐらいの目標を立てなければ、結局、何も変
わらないと松下さんはいう。

 道の構造改革を推進するには、まず中央政府と敢然と戦う勇気がい
る。戦えば血が流れる。官から民へ、中央から地方へというなら、カネ
も権限もさっぱりと地方に渡して、中央は中央でしかできないこと以外
やらないようにすべきだろう。しかし、実際には、東京にいる政治家や
官僚は、地方のことなど、まず、ほとんど考えていない。自分たちが生
き延びるのに必死だ。仕事は地方に押し付けても、大事なカネや権限を
地方に渡すことなど、これっぽっちも考えていない。小泉さんは違う
か。しかし、彼だって本質的に地方のことは念頭にない。自分のいう事
を聞かなかった部下の報復のために、その地方に縁もゆかりもない刺客
を、しめきりの前日に住民票を移して立候補させた人物だ。言うところ
の三位一体とは、三つのように見えるがやりたいことはタダひとつ、地
方交付税の削減のことだ。この豪腕のゴリアテと戦いを挑み,勝つに
は、ダビデの知恵と勇気がいる。並大抵の犠牲ではすまないと覚悟すべ
きだ。

中央の支配をぶっ壊す。同時に、道もまず自分自身をぶっ壊さなくては
なるまい。道は、いま持っているカネと権限と人材を基本的に全部市町
村に移すぐらいのファンダメンタルで、ラジカルで、ドラマチックな改
革を志すべきだ。道は道でしかできないこと以外はやってはならない。
道は、結局、間接行政だ。霞ヶ関に国民が愛想を尽かしているのは、市
民から遠いところにいて、カネと権力にまみれた椅子にふんぞり返って
いるからだ。その伝で言えば、道庁も同じ。自らの椅子を叩き壊さなけ
れば改革はない。

 高橋知事は「いま、北海道の危機です。この未曾有の危機を脱するた
め、私を先頭に道庁自ら徹底した改革を断行する決意であります」と宣
言した。つまり血を流してファンダメンタル、  ラジカル、ドラマ
チックな改革をすると宣言したわけだ。
 戦うには力が要る。政治家の力の本源はただひとつ。選挙民の圧倒的
な支持だ。この際、知事がやることは、道民や職員の負う痛みと同様の
痛みを自らも負う決意と、その痛みを乗り越えたとき北海道が迎える新
しい未来を、はっきりと道民の前に示すことだ。その上で、いったん辞
職して道民に信を問うぐらいの覚悟がいる。たった一つの法案の成否を
国民に問うて、すべての改革のパスポートを得た先例もある。道民すべ
てが改革を理解し、ともにやりぬく決意が示されれば、いかなる痛みも
困難も乗り切ることができる。いかなる強者も民衆の支持を受けた者を
排除することはできない。逆に、それが得られなければ改革は失敗す
る。北海道は、指導者にそこまでの決意を求めるところに追い込まれて
いる。 
絶対の危機は絶対のチャンスだ。

石黒直文(当会理事長)

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編集後記
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                  2005年11月21日

 久しぶりに観光で函館を訪れました。神戸育ちの私には港町函館
はなんとなく落ち着く大好きな町。でもひとつ気になることが。
それは朝市の強引な勧誘。
 ただ歩いているだけでも「蟹送るよ」「メロン安くするよ」とか
ウルサイほどクドイほど客引きから声がかかります。
 たくさん並ぶ食堂も市場価格から見ても、どんぶりで2,000円以上
するというのは安いとは思えないし、夏が旬ではないイクラとかを
市場で売る、というのも、ちょっと儲け主義が先行しているように
思います。
 阿寒でも鮭をくわえてる熊の木彫りが売れなくなって久しいとか。
お客様に心をつくしてサービスをして、本当に喜んでいただいて、
その後についてくるのがお金、というのが商売の基本だと思う私には、
まだまだ北海道観光ビジネスには物申したいことがたくさんあります。

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