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私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.33
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 「正直小泉の成功と失敗」
   石黒直文(当会理事長)

  編集後記

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               2006年2月14日
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 小泉さんは正直な人なのだろう。「私は、格差が悪いとは思わない。
悪平等こそが問題なのだ。光が出てきたら影のこと言う。今までは影
ばっかりだったじゃないか。成功した人間を妬む、足を引っ張る風潮の
ほうが問題だ」と国会で答弁した。

 小泉竹中ラインは、実は、何を隠そう、格差と不均衡をもとめて経
済政策を行ってきたのだ。格差を思い切ってつけることによって景気対
策は成功してきたのだ。光があるから影が見えてきたと小泉さんは言う
が、影があるから光が輝いて見える。

 小泉内閣は、2001年の4月に発足した。この4月で5年になる。客観的
に見てどういう成績になるのかを評価してみよう。評価科目は4科目。

  第一に景気対策は合格。第二に財政改革、この間、負債超過が
142
兆円増えた。これは不合格。第三に構造改革。このなかに「官から
民へ」と「中央から地方へ」の2科目があるが官から民へはともかく中
央から地方へは全然進んでいない。第四に外交。これはなにひとつ解け
た課題はない。みごとに落第。

こうして四科目並べてみると、絶対水準は本人が思っているほどいい成
績ではない。だが、少なくとも景気対策については、ここ数代の内閣が
ほとんど零点に近かった点から見ると相対的な成績順位は悪くないのか
もしれない。

 小泉内閣の景気対策が成功した背景には、国際環境がよかったという
ことがある。アメリカのドル垂れ流しが国際流動性を膨らまし、世界的
なバブルを生んでいる。日本の株価だけじゃない。世界中の株価が上
がっている。原油や金はあっという間に2倍だ。このドルが中国を潤
し、その中国が日本の輸出を支えたという幸運に恵まれた。これが無け
りゃ景気対策がうまくいったかどうかわからないが、運も実力のうち
だ。

 国内的には、小泉=竹中ラインの景気対策は、一言で言えば、誰かを
犠牲にして誰かを助けるという政策だ。具体的には、家計を犠牲にして
企業を助け、地方を犠牲にして中央を助けた。これはけしからんという
向きは、当然いるだろう。しかし、緊急経済政策としてはこれ以外に手
はなかった。

 90年代の初め、日本経済は大雪崩にあって谷底に転落した。あるいは
暴風で船がひっくり返って荒海に全員が投げ出された。このとき全員が
いっせいに這い上がろうとしたら失敗する。お互いの手足にしがみつい
たら全員が助からない。全員が凍死、あるいは溺死する。橋本、小渕の
時代は、財政が公共投資という手段を使って這い上がろうとした。とこ
ろが、皆が、われ先に財政にぶら下がった。その結果、綱はぶっつり切
れた。

 これを見て小泉竹中ラインは、「改革なくして成長なし」「改革に
は痛みを伴う」と称して財政から企業部門へ、優先して助ける方向を切
り替えた。その政策に乗って、他人の肩や頭を踏んづけて、自分の力で
よじ登ったのは企業部門だった。政府は当てにならない。自分の判断で
従業員の首切りをする。正規雇用をパート化する。賃金を切り下げる。
系列を叩き切る。

金融や税制もこれを後押しした。ゼロ金利政策によって90年代の初め家
計が得ていた金利収入は、差し引き年間14.5兆円あった。しかし2003
には逆に8.6兆円の支払超過となった。これは預金金利がほとんどゼロ
に近くなったのに、サラ金や住宅ローンの金利はそれほど下がらなかっ
たからだ。この結果、差引23.1兆円の金が、家計部門から企業と金融と
政府の3部門へ移転した。税金も法人負担は10.7兆円の減に対して個人
家計の負担減は5.7兆円に過ぎない。税金によるこの所得介入も家計か
ら企業への動きを加速したわけだ。

 今回の景気回復は企業自らの努力で達成したのであって、政府は何も
しなかったからよかったという向きがある。もちろん、企業部門の自力
回復が一番だ。しかし、前述の金融財政政策の後押しがなければ、企業
の目覚しい業績回復はなかったろう。日銀の資金循環をみると、その間
の家計から企業への金の流れをみごとに示している。この結果、上場企
業の経常利益水準は、バブル期を越えた。景気対策は見事に成功した。

たしかにその背後には、個人家計部門の犠牲がある。しかし、これは失
敗ではない。狙い通り,「想定内」の大成功なのだ。繰り返していう
が、雪崩や嵐で転落した人を助けるには、全部を一度に救おうと思った
ら失敗する。他の犠牲を顧みず、まわりのだれが泣きんでも、一人をま
ず押し上げる以外にない。資本主義の機関車役は企業だ。だから、まず
企業を助けるのが、正しいやり方なのだ。したがって、ここまでは小泉
竹中政策は成功。満点合格だ。小泉竹中は胸を張っていい。格差は
統計上見当たらないなどと白々しいことを言う必要はさらさらない。

「格差?格差があるのは当たり前じゃないか。格差をつけたから成功し
たんだ。」と傲然と嘯けばいいのだ。

問題はその次だ。谷底にまだ遭難した人が残っている。荒海に溺れかけ
て助けを求めている人が残っている。その一部は、もう這い上がる気力
も元気も失いつつある。日本の将来に対して希望を失っている。これら
の人を救出する方策は、小泉竹中政策の延長線上にはない。小泉
中政策は、「格差」と呼ばれる不均衡のゆえに、見事に成功した。その
冷厳な事実を、功罪ともに、率直に認めなければならない。その不均衡
がさらに拡大し、かつ永続的なものとなれば、谷底にいる人も荒海に漂
う人も、もう黙っちゃいない。いっせいに飛びついて引きずり落とし、
舟をひっくり返そうとする。せっかく助かったものまで、今度は不均衡
のゆえに転覆してしまう。成功は失敗に変わる。

だから、もし「格差はない」と認識しているなら、その人物は、今後の
政策担当者にふさわしくない。成功はたちまち失敗に変わる。日本経済
の構造計算の誤認や偽装が、日本の将来に決定的な禍根を残すのは姉歯
事件に限らない。たいへん日本にとって幸運なことは、この投手は今年
の秋、降板することが決まっていることだ。状況が変化しているのに同
じ球筋の投法では、間違いなく打ち込まれる。リリーフに失敗して、打
ち込まれればせっかくの勝利投手の権利も吹っ飛んでしまう。日本チー
ムそのものが、またもや負け組を続けることになってしまう。


石黒 直文(当会理事長)


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編集後記
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                  2006年2月14日

ついに、トリノオリンピック開催。選手のプロフィールを見るに、改めて冬の
オリンピックって北海道の人がたくさん出場してるんだなぁとうれしくなって
しまいますが、そんな中でも、日の丸飛行隊なるジャンプ陣の6人中4人を
輩出した下川町はエライ!特に、身長の低い選手に不利なルールまで
作られたのにもかかわらず日本のエースとして出場している岡部選手は
すごくエライ!(岡部さんには私が下川町に出張したとき一緒に写真撮って
もらったことあるから、特に応援!)
人口4000千人の町から4人もオリンピック選手が出るなんてホントにスゴイ
ですが近所のあの〇〇君とか、裏の家の〇〇オニーチャンが世界相手に
戦う環境にいるという下川って、スゴイかもしれません。がんばれ日本!

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