━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.34
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

http://www.kaitaku.gr.jp/

---------------------------------------------▼INDEX▼

 「沖縄と北海道」
   石黒直文(当会理事長、沖縄ファンクラブ理事)

  編集後記

   …………………………………………………………
                  2007年4月1日

   …………………………………………………………       
           
「もし、住む場所を自由に変えることができるとしたら、どの都道府県
に住みたいですか」(NHK全国県民意識調査1996)と訊かれたらあなた
ならどう答える。

北海道人の答は、第一位が沖縄。ついで静岡、京都、東京、神奈川と続
く。逆に沖縄の人がどう考えているかを見ると、嬉しいことに、ずば抜
けて断然の第一位が北海道なのだ。続く東京、大阪、福岡の二倍以上の
モテモテぶりだ。もちろん、誰でも自由に住むところを変えるわけには
いかないから、現実に移住が実現するわけではない。しかし、ウチナー
ンチュとドサンコが相思相愛だというのは嬉しいじゃないですか。

なぜ、そうなるのか。もちろん、気候のせいもあるだろう。長い雪と氷
の生活に耐えてきた道産子が、今度住むなら温暖な気候のところに住み
たいものだと考え、逆に、ウチナーンチュが、あかあかと燃えるストー
ブや雪原を駆けるスキーのある生活に憧れる。それが判らないわけでは
ない。しかし、日本列島の北と南の端っこに住む人々にとって、気候を
越えて共有できる何かがある。お互いに理解し、親近感を抱く思いがあ
る。

小説家村上龍は、登校拒否し集団移住を果たした中学生に「北海道か沖
縄に住みたかった。この二つの地域の人から騙されたことは一度もない
からです」(希望の国のエクソダス)と語らせている。

そうなのだ。共通して、われわれは中央の人間に騙されたことはあって
も、他国の人を騙したことは一度もない。騙す能力もないし、騙そうと
思ったこともない。人とは、互いに支えあい、助け合っていくもので
あって、人間同士、競ったり、争ったりするものではないと思って暮ら
してきたのだ。弱い人間が争っていては、厳しい自然の中で死に絶えて
しまう。だから、沖縄の人も道産子も他人にやさしい。よそ者に暖か
い。

人が助け合って生きる。生活慣習の中にもそれを支える制度が残ってい
る。沖縄のモンチュウ、モアイに似た相互扶助システムが北海道にあ
る。友子(ともこ)制度だ。もともとは、危険な坑内作業環境の下に置
かれた炭鉱夫の自発的な互助組織。万一、傘下の組合員が炭鉱災害で怪
我をしたり、死亡したりした場合、遺族を含めて一生面倒を見ていこう
とするものであった。また、友子は、単に共済に止まらず、未熟練者の
養成、技術指導、さらに冠婚葬祭を含む幅広い炭鉱(やま)の日常生活
全般に関わっていた。

この「一人一人は弱いものだから、みんなで助け合い,支え合っていこ
う」という相互扶助のシステムと精神は、炭鉱地帯だけでなく、北海道
の各方面に生き生きと残っている。北洋漁業の減船の嵐の中で、その痛
みをみんなで負担しあう「とも補償」もそうだし、生活協同組合活動や
中小企業家の相互組織が、北海道にあって全国に突出して大きいのも、
この「友子」意識から生まれたものと見ることができるのだ。

しかし、いまの世の中、人が助け合っていくという精神は流行らない。
他人のことを思いやっている暇はない。「格差のあるのは当たり前。悪
平等こそ問題だ」。隣国の人のこころの痛みなど「私にはどうしても理
解できない」と一国の総理が豪語して憚らない時代だ。競争がないとこ
ろに成長はない。他人を踏みつけてよじ登っていくことが正しいのだ。

なるほど、沖縄とわが北海道の経済成長指標が、このところ著しく劣っ
ているのは、そのせいだったか。他人を蹴落としても、競い争っていく
精神が足りなかったからか。

しかし、ひそかにわが北海道人は思っている。「沖縄だーい好き。お互
い、金で測った数字が低いからってびくびくすることはないよね。ホリ
エモンの言うとおり、世の中、お金で買えないものはないかもしれな
い。だがお金で買えるものにたいした物はないよね」

石黒直文(当会理事長、沖縄ファンクラブ理事)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                  2007年4月1日

先日、稚内で開催されたJapanCap犬ぞり大会を見にいってきました。
この大会は南極観測犬のタロジロが稚内出身犬ということもあり、2頭を
記念して稚内の市民の有志が頑張って続けておられると聞いてます。
2004
年の時はたくさんのシベリアンハスキーや、高速で走れるアラスカン
ハスキーや、珍しい樺太犬、エスキモー犬など、寒さにめちゃ強そうな
犬たちで会場は熱気に溢れて「そり犬好き」にはたまらない空間でした。
さて、今回もたくさんのそり犬たちと会えると凄く楽しみにいったのですが
・・・犬が少ない。
犬ぞりの醍醐味である多頭引き(6頭以上)クラスの参加者はたった1組。
多くが1頭か2頭引き・・・。柴犬やダックスフンド軍団もみかけました。
大型犬を飼うお宅が激減してると聞いていましたが・・・。
来年度の開催を心配していますが、時代と共に消えていく文化はあれど、
北海道ならではの「犬ぞり」の存続は思った以上に厳しそうです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

WEB】 http://www.kaitaku.gr.jp/
MAIL mm@kaitaku.gr.jp
 --------------------------------------------------------
【発行】NPO法人 私設北海道開拓使の会(FAX : 011-252-0406
【編集】太田 明子

 本メールマガジン掲載記事へのご意見、編集長からの質問へのご回
答など、読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載
させていただく場合があります。匿名などのご希望があれば、明記し
てください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。
 メールに記載された範囲でのプライバシーの公開から生じる、いか
なる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承くだ
さい。
『私設北海道開拓使の会 メールマガジン「異論・暴論・創論」』の
著作権は、それぞれの執筆者に帰属します。原稿の転載等を希望され
る方は、私設北海道開拓使の会 事務局までお問い合わせください。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/
利用して発行しています。
 
 解除はこちら http://www.mag2.com/m/0000102356.htm から。
 講読申し込み http://www.mag2.com/m/0000102356.htm から
 バックナンバーは 
     http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000102