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私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.43
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 ■2008年新春対談―――「捩(ねじれ)」から「戻(もどれ)」

    
石黒直文(当会理事長)


  編集後記

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               20081月16

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「新年明けましておめでとうございます。今年の北海道の元日は、
快晴で初日の出も拝めたし、何かいいことがありそうですね。
 先日ある本で読んだのだけれど、いま、たくさんのオーストラリア人
がニセコのマンションを買っている。それは、スキーが出来るせいも
あるけど、気候変動で将来オーストラリアは水飢饉になる。その心配
から、安心の出来る北海道への移住が始まっているのだというのです
ね。そういえば日本列島の中でも、稲作、畑作や果樹、花卉の適地が
どんどん北へ移っています。人間も大量北海道移住の時代が来るの
じゃないでしょうか。」 

「そうなってほしいね。確かに、オーストラリアは、ここ数年ひでり続き
で、もともと雨の少ない地域だから、放牧の羊や牛が大量に死んでい
るようだ。地球温暖化の危機感をオーストラリアの人が強く感じている
のはよくわかるね。しかし、オーストラリアの人たちの来道が増えている
本当の理由は、円安だ。2000年から見るとオーストラリアドルは円に対
して50%以上も上がった。スキー適地のユーロもカナダドルも5060
上昇して高い。北海道のホテル代やマンション価格は、ヨーロッパやカ
ナダに比較してぐっと割安になったわけだ。  
 だが、胸に手を当てて考えてみるとこのことを喜んでいていいのかね
え。円安ということは、日本円つまり日本そのものの国際的評価が下が
っているということだ。90年代、日本の一人当たりGDPは、世界で2番目
だった。2006年、OECD30カ国で18番目に下がっている。つまり先進国
30
人学級で、真ん中から下に成績が落っこちた。とくに2000年になって
からの落ち込みがひどい。」

「だけど、小泉さんも竹中さんも、6年続きの好況でいざなぎ景気を超え
たと胸を張っていたじゃないですか。そんなに貧乏国になったとは思え
ませんよ。」

「私は、いまの日本の最大の問題は危機感が無いことにあると思ってい
る。現実と意識の間の大きな捩れだ。いま、日本を覆う捩れ現象は、国
会だけじゃない。国会の捩れは、日本全体に起きている捩れの一表現
に過ぎない。企業と家計、企業の中でも輸出大企業と国内中小企業、中
央と地方、経営者と労働者、労働者の仲でも正規雇用と非正規雇用、そ
れらの捩れ現象が、いたるところできしみを生み、悲鳴を上げている。昨
年表面化した食品偽装や年金記録の問題も考えてみれば、長年の組織
の捩れが表面化したものかもしれない。」

「捩れは日本だけじゃない。アメリカもブッシュの7年で相当捩れてますね。
黒人のオバマや女性のクリントン陣営の盛り上げりは、ブッシュの国際的
にはイラク戦争の失敗と孤立化、国内的には市場経済原理主義の破綻
と格差拡大という捩れにうんざりした米国民の巻き戻し待望論じゃないで
すか。」

「そのとおりだね。私は、アメリカ国民のバランス感覚はたいしたものだと
思うね。過ちを犯した、行過ぎたと思えば、国民がそれを取り戻す方向に
変える力を持っている。
 捩れそのものが悪いといっているわけではない。世の中は真っ直ぐ一
直線に進むわけではない。過ちもあるし、行き過ぎもある。捩れて戻し、
伸びて縮みながら、波打って進むものだ。問題は捩れているのに気が
つかず、捩れをさらに大きくすれば、棒は折れてもう元へ戻らない。
 危機や捩れは、それを皆が意識すれば元へ戻ろうとするエネルギーが
生まれる。モルガンスタンレーの主任研究員のフェルドマンが面白いこと
をいっている。政治も経済も、危機Crisis→反応Response→ 改善Improv
ement
怠慢 Complacency→再び危機というCRICサイクルを必ず描くと
いう。危機や怠慢が怖いのではない。怠慢、傲慢に陥って、転落の道を
辿っているのにそれに気づかず、漫然として過ごしていることが怖いのだ。
皆がたいへんだという危機感を共有し、それに的確に反応して改善の道
を探れば、必ず道は拓ける。」

「危機の北海道も、道が拓けますかね。」

 「必ず拓けるよ。われわれの歴史を振り返ってみれば、われわれは世
界の中で最も貧しい国のひとつだったし、もっと厳しい条件の中から這い
上がってきた。北海道の開拓の歴史はさらに困難克服の歴史だ。
 甘えてちゃダメだが、逆に悪いことも永遠に続くわけではない。嵐もふ
ぶきも必ず晴れる。朝の来ない夜はない。積雪寒冷が、発展の悪条件
だった北海道が、いまや最適気候の地に変わり始めていると、さっき君
がいったばかりじゃないか。よく見てみると『捩』という字は手をとれば
『戻』という字だ。われわれに、危機を正面から見つめ、もう一度北海道
開拓精神の原点に戻れと指し示しているのかもしれないね。」


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編集後記
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                  20081月16

お正月は本州の実家に里帰りした移住者も多く、普段北海道などという飛
行機の距離にいるから、遠くて寒い北国に暮らすしばらくぶりのわが子への
「実家の気合」は大きいらしい。北海道に戻る時には、そんなもの札幌で
売ってるからというような、例えば米味噌系からお菓子や果物、独身者には
インスタントラーメンなどがぎっしり詰まった手土産を、いつ結婚するの仕事
はどうなの、などのたっぷりの小言とともに持たされる場合が多いそうな。
年末年始の航空券代が高額な時期は帰らない派の私にも実家の母からも
福袋でいいものがあったからとっておいたという電話が、元気でいるかもっ
と連絡せよ今度いつ帰るのだという小言と共にあり。去年の取り置き福袋は
お弁当箱やハンカチとかやはり札幌で買えるモノ系だったっけ。ハイハイと
生返事で返したものの、いくつになっても親というのはアリガタイですなぁ。

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