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私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.49
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  もう1人子どもが欲しい
   子育て支援を少子化対策に           
                   石黒直文(当会理事長)

  編集後記

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               2009年11月9日

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 1902年、人口センサスを「国勢調査」と名付けたのは、ときの
桂内閣だが、うまい名前をつけたものだ。人口(人間の数と質)
こそが国の勢いの大本なのだ。
 ご承知のとおり、日本の人口は今世紀に入って純減に向かっ
ている。このまま推移すれば今世紀の終わりには、日本の人口
は半減し、700年後には日本民族は絶滅する。米国の学者
P.Longman
がこういっている。「坂を登る列車を考えてみよ。エン
ジンが止まっても、しばらくは前進するから乗客は気がつかない
かもしれない。 しかし、間もなく列車は止まり、次いで後退し始め
る。そして恐ろしい勢いで谷底に落ちていく」 
 
現在の日本の困難は、ほとんどすべて人口問題に帰着できる。
ちょっと考えてみれば、経済成長の停滞、年金や医療の社会保
障費の増大、結果としての膨大な国の借金、これらのすべての
原因が少子化によることはすぐわかる。戦後、60年間、われわ
れは子どもの数を減らして夫婦で懸命に働いてカネを貯めてき
た。このことが「人口ボーナス」という高度成長を支えた。しかし
、その子ども減らしのツケは、数十年後、膨大な借金として返済
を迫ってくる。こんな簡単なことがなぜわからなかったのか。その
原因のひとつは、当時の厚生省人口問題研究所の見通しの誤
りにある。この研究所は、意図的にかどうかはわからないが、一
貫して出生率を過大に見積もってきた。30年前の見通しと、現在
の実現数との間には2000万人以上の差がある。もし、2000万人
の若者がいれば現在の状況は明らかに変わっている。 
 
それと同時に政治の無策だ。確かにここ十数年自公政権は数
次のエンジェル政策と称する少子化対策を採り、内閣府に少子
化担当大臣を置いた。しかし、全くおざなりの予算。腰が入って
いない。担当大臣はいずれも若い女性。選挙対策にはともかく、
全く子どもは増えなかった。前世紀、少子化の危機に見舞われ
たのは日本だけではない。
この危機に早くから警鐘を鳴らし、もののみごとに少子化対策に
成功した国がある。フランスと北欧3国だ。合計特殊出生率が1.3
前後まで落ちたこれらの国は、フランスが2を越えたのをはじめ
として、いずれも1.8を上回っている。投入した金が違う。政策ス
タンスが違う。GDPに対する子育て支援予算は、北欧3国の平均
3.7%、フランスが2.7%なのに対してわが国は0.6%。つまり北
欧の16,フランスの1/4.5 にすぎない。もしこれらの勝ち組並
みのカネなら、わが国は年間15兆円のカネを出さなければなら
なかった。 
 
現在の日本の少子化の原因についてもっともらしい識者の意見
が横行している。しかし当の女性の意見は明確だ。厚生労働省
の「結婚と出産に関する全国調査」によると、結婚した女性は平
均して2.5人の子どもを持ちたいと願っている。それが実現しない
のはなぜか。もちろん不妊、高齢化等肉体的身体的理由も少な
くない。だが圧倒的に高いのは経済上の理由だ。全体の81%が
カネがかかりすぎる、家が狭いといった理由を挙げている。3
目を断念した女性ではそれが91%に達している。スエーデンでも
面白い結果が出ている。この国は、政権交代によって財政によ
る子育て支援制度が変更になった。子育て支援が引き上げられ
ると出生率は上がり、引き下げられると出生率は下がっている。  
 
鳩山政権に対する批判の最も大きなものは、バラマキと成長政
策の欠如だという。その象徴としてこの子育て支援が槍玉に上
がっている。だが、もう一度胸に手を当てて考えてみよう。この
不毛の20年間の国の勢いの停滞の最大原因は、少子化と結果
としての老齢化にある。繰り返して言うが、若者の質と量の増大
向上が国勢なのだ。国勢の良否は、核軍事力でもなければ、貯
め込んだカネの額でもない。子どもの数がふえ、その子ども達が
良質な教育を受けて、希望を持っていきいきと働く国が成長する
国家なのだ。国全体が老齢化し、数少ない若者が未来に対する
希望を失った国が成長するはずがない。だから一国の最大の成
長政策は、子どもを増やし、教育に対するカネと努力を惜しまな
いことだ。つまり、「少子化対策」こそが未来に対する確かな投資
なのだ。鳩山政権のマニフェストの中でこの「子育て支援」は、バ
ラマキではなく、れっきとした成長政策なのだ。 
 
ただやり方に文句がある。政策スタンスを「子育て支援」から「少
子化対策=子どもを増やす」総合政策へ根本的に大きく転換せ
よ。子どもを産むか産まないかは、もちろん個人の自由とくに母
親の固有の権利だ。ヒットラーや戦時中の日本のような国家権
力の強制で干渉は絶対にしてはならない。しかし多くの母親は、
もう1人子どもが欲しいといっている。その望みが、経済的、肉
体的、制度的な理由でかなえられないと嘆いているのだ。その
悩みにこたえ、障害を取り除くことは間違いなく政治のやるべき
こと。胸を張ってやってもらいたい。
 
政策スタンスをやり方は勝ち組に学べ。()児童手当=第1子は
なし。 第2子から支給対象とし、第34子のインセンティブを急
増する。所得制限なし()出産育児休暇中の所得補償および復
職保証=強制とし全額国庫負担。半額事業者負担とするから利
用しにくいのだ。()保育サービス=幼保一元化、保育ママ制度
を含めて民間、NPOの参入を拡大する。供給者が増えれば市場
が悪貨を駆逐する。(4)婚外子を制度的に認め、母子家庭援助を
拡充する。
 
これらはいずれも勝ち組のフランスや北欧で実施し成功してい
る政策である。「結構だが財源が」という心配の向きがあろう。
何も心配要らない。年金の積立金が200兆円近くある。これは
わが国がまだ若者の国であった時代、子どもを減らして一生懸
命働き、貯め込んだものだ。つまり、子どもの代わりにカネを貯
めたのだ。このカネを使って今度は子どもにかえよう。子どもは
、一国の最大の朽ちぬ財産だ。成人するまでに費用と苦労は
かかるが、成人に達すれば、国民所得を増やし、税金や年金
を払う側に回る。
 
 厚生労働省の社会保障・人口問題研究所の長期見通しによ
れば、50年後の日本の人口は3800万人減って9000万人となる。
この中で、生産年齢人口(1564歳)が、3900万人減少して
4600
万人となり、11百万人増えて36百万人となった65歳以上の
高齢者を支える計算となる。もし、少子化対策が成功して合計
特殊出生率が5割増えて2人を越えれば、50年後生産年齢人口
2000万人近く増加する計算にな
る。
 鳩山首相が国会答弁で言ったように「あの時、日本は変わっ
たんだなあ」と50年後の人々が思えるようにしたいと痛切に考
えるのである。
 
 

石黒直文(当会理事長)

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編集後記
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                  2009年11月9日


北国名物色々あれど、この時期思うのは謎の虫「雪虫」。

雪を背負ったような小さな黒い虫なのだけど、そいつが飛んだら
必ず雪が降る、という謎の虫である。
  
そう言えば週末自転車漕いでたら、雪虫っぽい小さな黒い虫を
発見。おいおいまだ早いでと虫に突っ込んだんだけど・・・明日
の天気予報には雪だるまが。嗚呼本当にキミタチは雪虫だった
のね・・・。
 
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